コレを喜劇と呼ばすになんと言えばいいんだろう。僕は知らないうちに口の端で吊り上げていた。あっけにとられる僕の知人達。真っ赤に染まる僕の白かったタキシード。けどその赤さが、着ている本人の血でないのは僕が良く知っている。

僕の手には黒く重たい拳銃。もう弾は残り一発。

あぁ、真っ赤だ。元はあんなに白かったのに。教会も服も花嫁も真っ赤。謝らなくては。汚してしまったんだから。大切な式を汚してしまった。でも誰に謝ればいい?汚してしまった事を。

今日の花嫁?
式の客人?
いや、まずは君に謝ろう。


「ごめんね、隼人・・・」


もう温もりを失いかけているその体に口付けを。そこが頬か胸か足かすらも僕には分からないけど君にキスできただけで僕は満足だ。
僕を待っていた可愛い愛しいお姫様。随分待たせてしまったけれど、僕は君を救う王子様になれたかな?


「地獄で君の事を思うよ」


愛してた君を手にかけたのは僕。先に天国へと送ったのは僕の銃弾。だから僕は天国へはいけない。愛する君と同じところなんて無理だ。
だって君は言ったよね?自殺した人は天国へいけないって。君を殺した罪を背負って、僕は自ら命を絶とう。
最後の弾丸はそのために。周りで僕を止めようとする人たちがいるけど、そんな事はどうだって良い。僕はこうすることでしか罪を償いかたをしらないんだから。


その前にもう一人謝っておこう。
今日の主役の僕の花嫁となるはずだった君へ。


ごめんね、ごめんね。君の大事な日を壊してしまって。
君の記念となる日を汚してしまって。
君の愛するママを殺してしまって。

ごめんね、ごめんね。僕は君の王子にはなれなかった。
むしろ君の幸せを壊した悪魔。魔王。そう思ってくれてもかまわない。
君のことは好きだったよ。けど真実を知った僕は君を愛せそうにない。


「だって君は・・・」


僕と


隼人の


・・・・・。


ゆっくりと引き金に指が伸びる。
スローモーションのように。
ゆっくりと、ゆっくりと。


僕の、目の前で。


周りで僕を押さえつける人たちがいるけど、そんな事は本当にどうだって良い。だから誰か教えてくれ。あの銃を引くのは誰だ?




ズガーン・・・。




ゆっくりと、ゆっくりと。
眉間に向かって放たれた弾が嘘みたいに僕の目に焼きついてはなれなかったんだ。飛ぶ弾と、真っ赤に染まる世界と、銃を構えた花嫁。

・・・それは最後に見た光景。


「よくママの敵を取れたね。流石・・・俺の娘だよ」


・・・・・・・・・・・それは最後に聞こえた音。


あぁ、やっぱりコレは喜劇だったんだ。あんまり過ぎるオチに泣く事も怒ることも忘れた僕は殺されたって言うのに・・・・・ただただ笑うしかなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが最後に感じた感情とも知らずに。