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最近、雲雀の口から同じ単語が良く出てくる。それは・・・。
「わぉ」
まぁこれは今に始まったことじゃない雲雀の口癖だ。なんでも雲雀の好きなハヤリーナの恋人的なキャラの口癖らしい。雲雀はそのキャラクターを真似して「わぉ」や「噛み殺す」なんて口癖を良く使うし、愛用のトンファーもその人物が使う武器だから覚えたと前に熱く語られた。まぁ別に雲雀がそんな口癖を使ってるからといって俺に実害はないし校内でもそれがアニメキャラクターの口癖だと気づいている奴はいないみたいだ。トンファーも真似とはいえ独自に極めただけあって並盛では最強の強さを誇るまで昇華したというのならそれはそれで逆に褒めるべきところなんだろう。実際、やり始めた動機が何であれ強いわけだし。トンファーを操る雲雀の姿は何よりも格好いい。
と、まぁ雲雀についての語りはそれまでにしとこう。とにもかくにも「わぉ」というのは雲雀の口癖なんだ。なんだけど最近はその使用頻度が高い。それになんだろ。俺の耳に間違いが無ければ何処と無く雲雀の口癖がメロディに乗っているように感じるんだ。「♪わ〜お」とか気のせいじゃなければ「ナースがママの心で」とか「モアーイ」とかなんか一定のメロディに乗せて歌っている気がする。半分鼻歌、半分歌詞つき。でも俺自身はその曲に覚えが無い。覚えがあるとすれば前に昼間放送していた主婦の方々に大人気だった海外ドラマの主題歌に似てる気もしなくは無い。でもそれを雲雀が知るわけも無い。あいつが見てるのは基本アニメだし、雲雀が良く見ているハヤリーナの音楽が耳に入るときもあるけどそんな歌は無かったはずだ。
・・・・・もしかして俺、疲れてる・・・?
思わず心配になった俺はたまたま遊びに来ていた骸とクロームに相談した。で、その途端に二人の口から漏れたのは奴ら特有のクフフ笑い(これもキャラクターの真似らしい)。
「あぁ、それはバードのキャラソンの“ワォソナ”ですね」
「キャラソン?」
「キャラクターソングの略だよ隼人。アニメに出てくるキャラクターが歌う・・・アニメで流れる主題歌とは違う特別な歌のこと」
「最近のアニメでは珍しくないですからね。カラオケへの普及率も高いですし・・・まぁそれでもテニ●リの歌で1ページ見開きで埋まってるのには流石の僕たちも驚きましたが」
と、まぁその後簡単にキャラクターソングについて二人から説明してもらった。
どうやら雲雀が歌っていたのは雲雀が口癖の真似をしているキャラクターが歌っている歌らしい。どうやら俺の聞き間違いじゃなかったようだ。少し安心。でもそれを年がら年中歌っている恋人にかなり悲しくなってきた。
「クハハハハ。キャラソンは洗脳率が高い歌が多いですからね!僕もリンネのキャラソン“クフフサンバ”を聞いた日は一日耳から離れませんでしたよ」
「でも・・・あれは腹筋が崩壊するくらいのネタソング・・・」
「そういって貴方も僕と聞いてから暫く口ずさんでいたじゃないですか」
「・・・・・・」
まぁでも他所も他所で複雑らしい。うちだけじゃなくて良かった。
で、そんな話をした数日後。俺は別の件で頭を悩ませていた。雲雀の鼻歌の謎が解けたのは良い。それがキャラクターソングとかいうCDで発売されてて骸から実物も見せてもらった(クフフサンバをプレゼントされそうになった日には丁重にお断りしたが)。しかし、だ。そんな俺の目の前には巨大なダンボールに詰め合わせになっている同じCD。そのCDは勿論雲雀の鼻歌で歌われてた“ワォソナ”なるものだ。
雲雀がハヤリーナ好きなのは知っている。今に始まったことではないし今更止めさせようとは思ってない。思ってない・・・思ってないけど・・・コレは明らかに異常だろう。
そんなこんなで今日も遊びに来ていた骸とクロームに俺は先日同様雲雀についての相談を持ちかけていた。
「あぁ、それはハヤリーナのキャラソンシリーズのアンケートのためでしょうね」
「アンケート?」
「今回のキャラクターソングの促進用にやっているキャンペーンのこと。キャラクターソングは二人一組で発売されるんだけど、それのハヤリーナと組むキャラクターをアンケート投票で決めることになってるの」
「しかも一位の組み合わせに投票した人の中から抽選で非売品のCDがプレゼントされることになってますからね。雲雀君はそれが目当てでしょうね」
まぁ僕達も同様ですが。そう言って骸は先日俺にプレゼントしようとしたクフフサンバのCDをトランプのように広げて俺に見せた。ちなみにクロームは持ってないらしい。理由はまだ目当てのキャラクターが未発売だからとか。・・・つまり目当てのキャラが発売したら買う気なんだなクローム。
「非売品の特別なCDは巫女様のキャラクターソングらしいですからね」
「巫女様・・・噂ではトンノと対になるキャラソン・・・」
「まぁCV.が同じと分かっていても巫女様とハヤリーナでは萌えポイントが違いますからね。どちらも見逃せない・・・いや聞き逃せませんよ」
「・・・・・・」
そう言って熱く“巫女様”とやらについて語り始めた骸に時折無言で頷いて同意するクローム。ていうか誰だ巫女様って。トンノは雲雀に付き合ってみたハヤリーナでそんな名前がいたような気がするけど。
けどまぁ・・・うん。相変わらず大変なのはうちだけではないらしい。それは良かった、安心した。
けれども納得したからこそ思う。あの膨大な量のCDに幾らかけたんだ雲雀!!単純計算して万単位の買い物だろう!
思わずその夜に帰ってきた雲雀にダンボールを突きつけて叱り付ける。年上の男を相手に正座させて説教かける図もいかがなものかと思ったが俺が日々1円貯金をしたり夕方のタイムセールとか半額シールとかに目を光らせている日常を考えたら怒らずにいられなかった。
その後、なんとか雲雀にCDの大人買い(というらしい)を止めることを約束させた俺。中古ショップに今回買いだめしたCDを売り飛ばすことも無理やり取り付けるとその売上金も家に入れることを約束させる。ていうか頭痛い。骸達も語っていたが“巫女様CD”というのをゲットするために家系を火の車にする気か、コイツは。
世間には夫の趣味にかける費用のために別れる夫婦もいるらしい。そんな妻の気分を思いがけずに味わった今日この頃。
その数日後にはその約束も空しく家にはマシュマロの袋が散乱していた。ただ黙々と部屋の中心でマシュマロが入っているお菓子の袋の中に入っているカードを取り出している雲雀と骸とクローム。カードが包まれていた袋を破いてはため息を吐き、一つ開いてはまたため息を吐き、たまに声をかけては持っているものと交換したり・・・と蚊帳の外の俺には意味不明な作業を延々と繰り返す。
今回も事情が飲み込めなかった俺はマシュマロの消費のために呼んだ白蘭とそれの保護者としてついてきた正一に大まかな説明をもらう。なんでも今回のマシュマロは“ハヤリーナマシュマロ”と言ってそれぞれの袋にカードが一枚ずつ入っている仕様らしい。
「100種類あるカードには全部数字が振り分けられててね01〜09の0シリーズはレアカード。60番代はリンネのカード、70番代はハヤリーナカード、80番代はバードのカード、90番代はクロロームのカードって特徴があるんだよ」
そう言って俺の胸に顔を摺り寄せてくる白蘭。平らな胸にすりすりと頬を寄せても面白いのか分からないが白蘭が幸せそうなので俺は何も言えずにされるがままだった。
「つまり交換したりしてるのは目当てのキャラクターのカードの収集があるわけだな」
「そうでしょうね。ここにいる皆さん、好きなキャラクターが偏っているみたいですから」
呆れ気味に呟く正一の目に映るのは雲雀の席の横に集められた80番代のカード。勿論クロームの横には90番代、骸の横には60番代のカードが大事に集められている。
「でもカードを集めるためとは言え、あれはやりすぎじゃないか」
広がるマシュマロの袋。次々と出される新たなダンボール。それを見ていた俺にマシュマロを食べ始めた白蘭がこれまた丁寧に語り始めた。
「あれはねーきっと幻の100番を探してるんだよ」
その言葉に嫌な予感を覚える俺。こういうときは当たるんだよな。
そして案の定、白蘭が教えてくれた幻の100番のカードを聞いて俺は壮大なため息を着いた。
幻の100番。それを封筒に入れて指定された場所に送るとハヤリーナの音声が入った非売品の目覚まし時計が当たるらしい。さらにその音声は当選者の指定した台詞と名前を読んでくれるんだとか。
く、くだらない・・・。俺はそう思っていたが作業に没頭する3人には届かない思いだった。
思わず己の無力さに涙を飲みそうになりながら無邪気にマシュマロをほうばる白蘭の頭を撫でる。その途端。
「あ」
「え」
「うそ・・・」
そう呟く3人の前に現れたのは黄金色に輝くカードが一枚。
「幻のカードだ・・・」
白蘭の台詞どおりそれには大きく100の数字が刻まれていた。
「やった・・・これでハヤリーナに“こらー!ヒバリン早く起きないとハヤリーナパンチだぞ!”って声で起こしてもらえる!」
「クフフ・・・これで毎朝、ハヤリーナに“骸、起きて!何時までも寝てたら・・・ハヤリーナ困っちゃうよぉ”と言ってもらえます!」
「・・・・ハヤリーナに・・・・“ねぇ・・・お願い。クロームがおきてくれないとハヤリーナ寂しいよ・・・”っておねだりして貰える!」
それぞれにガッツポーズを構えて黄金のカードを見つめる。しかしどうだろう。先ほどまでの祝福ムードを一転。二三個と話した彼らは次の瞬間にはそれぞれの武器を構えて臨戦態勢に入っていた。
「お菓子の袋を開けた僕にこれを手に入れる権利はあるはずだよ」
「共同購入を持ちかけた僕に権利があるはずです」
「お菓子のコーナーでマシュマロを厳選したのは私・・・」
カードを中心に放たれる火花。それぞれに譲る気は無いらしくすでに雲雀の手にはトンファーが握られている。
「噛み殺す」
「落ちろ、そして巡れ」
「負けない」
あー、第●話での台詞だー。そんな白蘭の台詞を聞きながら夕食の献立を考え始めていた俺は完全に現実逃避の状態だった。
そして数日後。早朝に目覚まし時計で起こされた俺は携帯電話をを取り出し電話帳を開いた。もうあのカード騒動の翌日から習慣になった行動。目当ての名前を見つけると俺は数回のコールの後に覚悟を決めて叫ぶ。
「おはようハヤリーナだよ!お寝坊さんはいないかな?元気に起きて今日も一日ガンバロー」
一気に話しかけると一方的に切って次に電話をかける。コレを数回。かける相手は骸、クローム、白蘭だ。
カードを手に入れたあの日。3人はカードを取り合った末、手加減を知らない彼らのせいでカードは最後には無残な姿をさらしていた。手と手に四方八方に引っ張られたカードは元の姿を保っておらず数字の判別が難しいほど破かれてしまったのだ。
これではもう送ることはできない=目覚まし時計をゲットできない。その現実に灰と化してしまった3人だったがその後、白蘭の意外な一言が3人を復活させた。
「僕目覚しいらないよ。だって毎日、隼人ママが電話で起こしてくれるもん」
その言葉で顔を上げる3人。次の瞬間には骸とクロームに手を取られ詰め寄られていた。
「代金はこちらが払います!どうか明日からモーニングコールを」
「隼人に起こしてもらえるなら・・・それこそ幾ら掛かってもかまわない!!」
そう叫ぶ六道兄弟に頷くことしかできなかった俺。そして翌日から始まったモーニングコールサービスに俺は付き合わされることとなった。
ちなみに同じ家に住んでいる雲雀はモーニングコールを俺に頼むことは無かった。まぁ同じ家に住んでいるのだから電話で起こす必要は無いと判断した俺がごねた結果でもあるんだけど。
でも変わりに奴が頼んできたこと。・・・それは・・・。
「どうか僕の初音●クになって!」
真顔で言われた一言。その言葉に腕を掲げて盛り上がる骸とクロームと白蘭。呆れて頭を抱える正一。
そして今、俺は・・・4人が満足するキャラクターソングを歌うために作詞をさせられている。
「で、十代目。この曲と歌詞で言いと思います?」
「だから俺に判断を求めないでよ」
雲雀さんと骸さんが歌ってたキャラソンの元ネタは「あれ」ですw |
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