06日目
食欲や体調をみる限り元気を取り戻せたようで今日は一緒に住むようになってから初めて風呂にいれてやる事にした。病み上がりであることや小さな傷が沢山ある身体を思って温かい湯で濡らしたタオルで今までは身体を拭いてやったりはしてたが流石にここ数日の様子を見ればそろそろ普段通りの生活にもどし始めても大丈夫だろう。十代目が幼いランボ達を風呂にいれたときの話を思い出し、風呂に昨日の買物のときこっそり買っておいたアヒルの玩具を浮かべてやると白蘭は大喜びで湯船に浸かった。

「このこの名前はそんちょーだよ」

と白蘭がアヒルの玩具を命名。意味は分からないが楽しそうなのでまぁ良いだろう。ただ俺自信は子供と風呂に入るというのは慣れてないからか思ったより疲れた。

(ランボ達を見てた十代目を本気で尊敬する)



07日目
昨日の夜に髪を洗ってやって気付いたが白蘭の前髪が目にかかる所まで伸ていた。よくよく見てやると髪の毛の長さもまちまち。母親が切ってやってたのだろうか?素人が切ってたにしてもひどすぎる仕上がりに俺が整えてやろうとハサミを持って白蘭を椅子に座らせる。が髪を掴んだ瞬間、大声をあげて俺の手を振り払い白蘭は椅子から飛び降り逃げ出した。家中を追い掛けまわしやっとの思いで捕まえると白蘭は伏せ目で身体を震わせ必死に唇を動かす。

「ごめんなさい・・・ママ・・・」

何回も謝りながら白蘭はポツリポツリと話をはじめた。・・・どうやら白蘭は実母に髪を掴まれ殴られるという経験が何度もあるらしい。そして髪に触れられるのはその時の記憶を蘇らせてしまうようだ。俺は何度も謝る小さな身体を抱き締めるともう一度椅子にもどりハサミを持った。ただ今度は白蘭を抱き抱えるように膝にのせ俺も座る形で髪に触れる。すると・・・小さく震えながらも白蘭は最後まで俺から逃げなかった。そして終わってから小さく呟く。
ママのチョキチョキならこわくない、と。そう言いながら微笑む白蘭に俺は何故か少し安心したような感情を覚えた。

(白蘭の本当の笑みを見るのは悪い気がしない)


08日目
髪を切ってサッパリしたからか今朝から白蘭がご機嫌だ。鏡で髪をすいてやるたびにニコニコしてる。一度吹っ切れてから俺にならさわられるのが逆に好きになってくれたみたいだ。

「ママあたま〜」

とか撫でてほしがる様子は小動物を思わせて少し笑えた。ただ何でも無い時に撫でてもしょうが無いから白蘭が良いことをしたら、と約束させる。指切りをしたらまた嬉しそうに笑ってた。

(さて白蘭はどんな良いことをしてくれるかな)


09日目
昨日の約束があって白蘭が自分から俺の手伝いがしたいと言い始めた。まだ幼いうえに不馴れだから手伝いと言っても失敗が多いが俺の後にくっついて手伝おうとする様子は微笑ましくてたまらない。

「ねーねーママ、なにかぼくにしてほしいことない?」

でも余りのしつこさに呆れもまざる。まさかトイレにまでついて来るとは・・・。悪い子では無いだけに少し頭が痛い。

(頭を抱えてたら白蘭が水を持ってきてくれた。優しい子、なんだよな)


10日目
天気が良いので午後から公園に出かけた。公園には白蘭と同じくらいの年の子が沢山いて白蘭も何処となく楽しそう。でも楽しそうにしながらも白蘭はなかなか子供達の輪に入りたがらない。

「ぼく・・・ママだけでいい」

最後は無理矢理、輪に交ぜようとしたら白蘭がポツリとそう言って俺にしがみついた。ずっと閉鎖された環境下だったから慣れてないのかもしれない。手が白くなるまで俺の服を掴んでる姿を見て、俺は白蘭を抱えて家に帰った。今は無理を強いることもない。でもいつか自分から友達が作れると良いな。

(未来のこいつは逆に人なつっこかった気がする)