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※この作品は捏造館の熊侍さまより回ってきました「パイ投げバトン」への贈呈作品です※
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「獄寺、これ食べろ」
リボーンさんがそう言って書類をまとめていた俺に差し出してきたのは生クリームがたくさんかかったレモンパイでした。
「おいしいか?」
「美味しいです」
もぐもぐもぐ・・・。
貰ったパイをむしゃむしゃと頂きながら俺は素直に感想を述べます。
ほのかに香る酸味と生クリームの甘み。
黄金比とも呼べるバランスで味付けされたパイはとてもとても美味しいです。
もぐもぐもぐ・・・。
俺は二・三口食べたところでふとリボーンさんお顔を見つめました。
「リボーンさんは食べないんですか?」
「・・・・・・・・・・俺は遠慮しておく」
「そうですか」
それだけ言うと俺は再び視線をレモンパイに戻します。
勿体無い。こんなに美味しいレモンパイをいらないなんて。
は!それとももしかしてこのレモンパイには何かリボーンさんが食べられない理由があるのでしょうか!?
いや、もしかしたらこのレモンパイの食べ方で俺がボンゴレの嵐の守護者にふさわしいのか観察してるのかもしれない!
「ど、どうしたんだお前・・・?」
フォークを握ったままフルフルと震える俺に珍しく動揺した声でリボーンさんが尋ねてきました。
「お、おれ・・・・」
「ん?」
「俺、頑張ります!」
「はぁ?」
瞳に炎を宿してレモンパイを見つめる俺。
見ていてください、リボーンさん!
嵐の守護者にふさわしい食べっぷり、ごらんに見せて見せます。
「お前・・・またなんか早とちりしてないか」
「へ?」
間抜けな声を出した俺にリボーンさんは深い深い溜め息をつきました。
「これは単なる3時の間食だ。そこまで気合を込めて食べるようなモンじゃねーよ」
呆れたようにそう呟くリボーンさん。
3時の間食・・・それはつまり昼食と夕食の間のおやつ、ってことですよね?
「ただの、おやつ、なんですか?」
おもわずたどたどしく片言で聞いてしまった俺にリボーンさんは頷きました。
あぁ・・・そうですか。ただのおやつですか。
「なぜそこで肩を落とす」
肩をガクーンと落として気落ちした俺にリボーンさんはあわてて尋ねます。
いいや・・・はい、それ以上は聞かないでください。
なんか自分がバカすぎて余計悲しくなってくるんで。
俺は自分の思考を誤魔化すようにレモンパイをフォークで刺すと一口含みました。
あぁ、やっぱり美味しい。
単純な自分で余計に情けなくなるが美味しいものを食べると思考が幸せになっていく。
「おいしいですリボーンさん」
うっとりと呟くと半分以上減ったレモンパイを見てリボーンさんは満足そうに微笑みました。
こんなに穏やかに笑うリボーンさんなんて珍しいですね?
しかし、とりリボーンさんを見てると思考はレモンパイから少しずれる。
このレモンパイ・・・どうして俺なんかに食べさせるんだろ。
この部屋には十代目も他の守護者もいるのにリボーンさんは部屋に入ってくると真っ先に俺の前にこのレモンパイを差し出してきました。
それこそ十代目達の見ている目の前での出来事です。
そして今現在、リボーンさんの持ってきたレモンパイはひとかけらも他の人々のところに配られる事は無く着々と俺の胃の中に納まっています。
いいのかな・・・これで。
ちらりと部屋の奥で俺たちの様子を笑顔で見ている十代目を見ました。
彼は何も気にせずリボーンさんが来たときと同様、黙々と書類をまとめていらっしゃいます。
ほかの守護者達も何も気にせず普段の業務を全うしているようです。
ただ、俺が此処でレモンパイを食べているのだけがこの部屋の中で浮いています。
あと俺がレモンパイを食べているのを見つめているリボーンさん。
とりあえず俺たち二人だけが異様なほどこの部屋の中で非日常な光景なのです。
「あの・・・・」
なんだか恥ずかしくなってきた俺は唇についた生クリームをティッシュデふき取りながらリボーンさんに聞こうとしました。
なんで・・・俺だけがレモンパイを食べているんですか?
それこそ持ってきたリボーンさんですら食べていないであろうに。
それを言おうとしたところでリボーンさんの指で俺の唇はふさがれます。
「俺はお前に食べてほしくて持ってきたんだ」
それだけ言うと離れる彼の小さな指。
生クリームをつけた指を舐め取るとリボーンさんは目で“わかったか?”と聞いてきました。
俺はそれに頷きます。なるほどそういう事ですか。
「俺、毒見だったんですね!」
ばさばさばさー!
俺が叫ぶのと同時に十代目の机から豪快に書類が落ちました。
リボーンさんは顔を手で覆って何かを堪えているようです。
他の守護者も、まるで時が止まったように立ち止まり俺たちを凝視しています。
「え?・・・あの・・・」
「あのな、獄寺よく聞け」
リボーンさんはそう言うと俺の肩を掴んで瞳を覗き込んできました。
黒い瞳の中に俺の顔が映る。あぁ・・・なんか嬉しいな。
「このレモンパイは俺が作ったものだ。だから毒なんて入ってない」
「あぁ、リボーンさんの手作りですか」
「厳選した材料を使ってるから製造過程でも入ってないし、パイが完成してからも俺以外が触れていないから毒を入れることは不可能だ」
「そうなりますね」
「そして俺は甘いものが嫌いだ。レモンパイとかさっぱりした甘いものが好きなのはお前だと聞いている」
「はい、確かに甘いものは好きです」
「それで・・・だ」
リボーンさんはそう言うと俺の肩を掴んでいる掌に力を込めました。
「お前の好物のレモンパイを甘いものが嫌いな俺が作って持ってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何か言う事はないか?」
じっと見つめるリボーンさん。じっと見つめ返す俺。
甘いものが嫌いなリボーンさんが俺の好物を作って持って来てくれて・・・結果、俺が言う事。
ぽんと自分の掌に拳を落とした俺はレモンパイを見つめるともう一度フォークを刺しました。
もぐもぐもぐ・・・。
もぐもぐもぐ・・・。
もぐもぐもぐ・・・。
リボーンさんに見つめられ、一心不乱に食べる俺。
そして最後の一かけを食べると真っ白になったお皿を掌に載せリボーンさんにそっと差し出します。
「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」
にっこり笑ってレモンパイの感想を。
それが俺が考えたリボーンさんに言わなければいけないこと。
なのに・・・なぜかリボーンさんは俺の肩から手を離し再び顔を覆って溜め息をつきます。
十代目は部屋中に響くぐらいの声量で笑い出しています。
そして他の守護者は・・・何故かリボーンさんを見て同情するような視線を送っていました。
いったい・・・なんなんだろう。
「もういい」
低い声で呟くとリボーンさんは乱暴に俺の手から皿を取って行きました。
えっと・・・俺の感想が気に入らなかったのでしょうか。
けど此処で謝ると余計に怒らせるような気がするんですよね。なんとなく。
だから俺は立ち去ろうとするリボーンさんの背中に小さく小さく呟きます。
「また、作ってくださいね」
聞こえたのか聞こえなかったのか。
十代目の笑い声で消えそうな俺の声。
でも、俺がそう呟いたときリボーンさんの肩はかすかに震えた気がしました。
「で、なにあれ?」
「甘やかす事が最高の愛情表現のヒットマンと、甘やかされてる事を自覚してない爆弾青年」
「・・・・・・・・・・・」
「そして片思いバカップル?」
「・・・どうしようもないね」
「だよねー」
(言い訳という名のあとがき)
パイ投げバトンのおわびのおわびwスイートバージョンでお送りしてます。
今度こそ熊さんの好きなすれ違い!すれ違い!ていうか獄がバカです、はい。
一応前回のと比例するように甘めで味付けしてみましたけどどうかなかな?
ていうかリボハヤじゃないのに甘やかしてるリボーンさんだよ!レアだよ!
そんなわけでお目汚しですがお受け取りくださいーvお返しは白獄がいいですw(言い切った)
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