おやつは300円まで。
遠足のしおりに書かれたお決まりの言葉。
ちなみにバナナはおやつに入りません。


というわけでツナとハヤトちゃんは遠足用のおやつをゲットすべく放課後、家にかばんを置くと近所の駄菓子屋へと向かった。
ハヤトちゃんの肩にかけたポーチの中には遠足のおやつの300円と今日のおやつ代の100円の合計400円。ハヤトちゃんにとっては大金なのか少し歩くたびにポーチを覗き込んだり叩いたり。そしてお金があるのを安心するとまたも楽しそうに歩みを進める。


「ハヤトちゃん、心配しなくても落としたりしてないから大丈夫だよ」

「いえ!マフィアたるとも油断してはいけないのです!!それにいつ何処にポーチの中の大金を狙ってくるシェッレラート(悪者)がいるとも限りません」


ムン、意気込みながら大事にポーチを抱えるハヤトちゃん。
奈々ママお手製のウサギさんのアプリケットがついたポーチはこの少女にとっては十代目の次に大事な宝物だ。そのサイズも見た目もハヤトちゃんにぴったりでとても可愛らしい。

けれど・・・何処の世界にこんな幼女のぷりちーなポーチを狙う悪者がいるのだろう。


「まぁ、奴ならありえるか・・・・」


後ろをチラリと振り向いて溜め息を一つ。
電信柱の影で二人のやり取りを荒い息遣いで見守る男、山本。彼なら・・・否定は出来ない。というか今日だって(あまりにも哀れすぎて)ツナが今回の買い物に誘ってやったのに何故それを断って今、犯罪チックな尾行をしているのだろう。
それが山本の業(カルマ)なのか。影から見守るのが彼の愛の形なのか何なのか。


「堂々と手を出されるのも怖いけど、こういうのはさらに怖い・・・」

「ん?じゅーだいめ、顔がアッリビーレ(青ざめ)てますよ?」

「・・・気にしないで。早くお店行こう、うん」


ツナは後ろを見せないようにハヤトちゃんの背中を押しながら先を急ぐ。山本は手馴れた様子で電信柱を移動して尾行する。足音も無く、影も見せず。ツナの超直観力がなければ気付けないだろう、その尾行スタイル。


おまわりさん・・・同級生に犯罪者予備軍がいます。


いや、すでに犯罪者か。なんか山本を見ているとマフィアなんて可愛いものだな・・・と無意識に物思いにふけるツナの姿がそこにあった。