「いやね、もういらない紙の裏に落書きでもさせようかと思ったらこの子ちゃんと答えを書き始めちゃってね・・・」


側にいた数学の教師が事のあらましを説明する。

保護者が迎えに来るまで、ハヤトに暇つぶし用の紙を与えた。
裏面が白紙の元テスト用紙。
何本かの筆記用具を与え、コレで落書でもしておとなしくしてたら、と思っていた所、彼女は白紙の面でなく、問題用紙の面に何かを書き始めたのである。
試しに覗き込んでみた所、そこに書かれていた数式、答えは全問正解であった。他の教科でもやってみた所、英語、科学、社会、国語、もれなく満点。念のために他のプリントでも試したが彼女はことごとくそれらの問題を解いていったのである。


「じゅーだいめ?」


あらましを聞いたツナはその事実に愕然とする。

つまりなんというか・・・この子は天才児?
そういえば始めて会ったときはイタリア語しか話せなかった彼女がここ数週間で自分と普通に会話していたりする。それは子供特有の吸収力のよさだけでは説明しきれないレベルだと、ツナは今になって気がついた。


「じゅーだいめ?じゅーだいめーーー」
「ハ、ハヤトちゃん、凄いよ!」
「へ?」


わけも分からないハヤトだったがツナの嬉しそうな顔を見て釣られて笑い出す。なんか分からないけど褒められてはいるようだ。


「俺だってこの問題解けないのに、3歳の君が解けるなんて!」
「え?でもファーチレな問題でしたよ?」
「ファー?? よくわからないけど凄いよ!!」


その後、ツナがリボーンに聞いた所ハヤトはイタリアでも飛び級で小学校は卒業していたらしい。日本でも特別な学校で中学生以上の教育を受ける予定だったらしい・・が。





「じゅーだいめ、おはようございます!」


けれどそんな事件の後、ハヤトは特別な学校を選ばず、ツナの通う平凡な中学校への進学を希望した。

勿論、理由は簡単。ツナがいるからである。両親を説得した彼女は3歳ながらも10も離れたツナの同級生だ。


「おはよう」


ツナも今朝も現れた小さな影に呆れながらも、挨拶をする。


ツナと一緒に学校に行くハヤトはご機嫌そのものだ。
ツナもそんな彼女の背中を見ながら苦笑する。




まぁいいか・・・。




これから彼女のせいで色々巻き込まれそうだけど、とりあえず・・・今は平和だから。


こうして皮肉というか不思議な形で、ツナは遅刻せずに学校に行けるようになったのだった。