結局、あのあと中学までツナとやってきたハヤトは校門にいた風紀委員と教師達によって引き離された。


「やぁぁぁぁぁぁ!じゅーだいめーーーー」


子供特有の甲高い声での泣き声は校門のみならず学校中に響き渡り、教室にいた生徒も何事かと窓から顔をのぞかせる。


「じゅーだいめ!じゅーだいめーーー!!」


何度も何度も名前呼ぶ声に後ろ髪引かれつつもツナは生徒達の視線を集めている事に気づき恥ずかしさから慌てて走り去る。どんどん校舎へと姿を消していくツナの姿にさらに大声を張り上げながら絶望感に暴れまくるハヤト。

なかなか泣きやむ気配のないハヤトを見かねた教師達は彼女を抱きかかえると、未だに校舎から様子を見ている生徒達を一括し職員室へと彼女を連行するのであった。





一時間目の終わり、朝の別れ方が気になったツナは休み時間を利用して職員室に向かっていた。自分から突き放したとは言え、あのままでは後味が悪い。
それに迷惑がってみても、兄弟のいないツナにはハヤトは妹のような存在に近いのである。

そんな妹分が気になってしょうがなかったツナは一時間目の授業などに身が入らず、休み時間を告げるチャイムが響き次第廊下に飛び出していた。


「し、失礼します!」


大声を出しながら職員室の扉を開ける。別に自分自身は悪いことをした覚えはないのだが、なんとなく緊張する瞬間である。


「あ、じゅーだいめーー!」


職員室の一角にいたハヤトはツナの声が聞こえるとそれまで何かを書いていた机から頭を上げて手を振った。それに気づき、ツナもハヤトのいる机に近づく。


「えへへ・・・じゅーだいめだv」
「ふぅ・・・大人しくしてた?いい子にしてた?迷惑かけてない?」


こういうと完璧に自分が保護者になった気がする。
無意識にそう思った自分に苦笑しながらツナが机に目をやると、そこには信じられない光景が広がっていた。


数枚のテストとプリントの山。そしてそこに書かれた数式と単語の数々はまるで答えが記入されているように見える。


「これって・・・」


ツナは見覚えのある一枚に手をのばした。

たしかコレは先週受けたテストの内容。
自分はほとんど分からず白紙で出してしまった気がするのだが、ハヤトが持っている分には独特な字ながらもちゃんと答えが記入されていた。