で、そんな僕の過去の回想。
それを思い出してもこの山本武が語るような美しい思い出は僕と隼人の中にはミジンコたりとものこってなかった。というか残るより前になかったというほうが正しいかも。


「うんうん・・・なるほどねー」


なぜか僕の心の中・・・と過去の出来事をのぞいていたかのようにうなずく沢田。
あいも変わらず隼人は僕の背中で小動物のようにぷるぷると小刻みに震えている。
うん、草食動物は嫌いだけどコレは萌えるね。


「萌えとか言わないでくださいよ」


だから心の中の台詞に突っ込まないでくれるかな。
そう思いながら睨み付けるが沢田は自分に都合の悪いことは聞かないようだった。気弱そうな外見に似使わずなかなか食えない男だ、こいつは。


まぁでも今は横の沢田より目の前の狂犬駆除のほうが優先される。


「山本武!」
「ん?なんですか雲雀先輩」
「今すぐ死んで」


それだけ言うと僕は仕込んでいたトンファーを取り出した。そして相手が防御の姿勢に入る前に殴りかかる。

ごすぅ・・・ばき・・・・。

良い音が教室に響き渡った。


「きょ・・・じゃなかった雲雀・・・・」
「なに、隼人?」


口を動かしながらも僕の攻撃は止まらない。

ごすぅ・・・・ばき・・・ぐしゃ・・・・。

最初の一撃の打ち所が悪かったのか山本武は床に突っ伏すと反撃することなく僕は制裁を受け続けている。


「あ・・・あのね・・・・」
「うん」


怯えが混ざっているせいか隼人のしゃべりはたどたどしい。
そんな彼女を安心させるために僕はできる限り安心させるように優しくたずねたが隼人の口から次の言葉はなかなかでなかった。
僕の攻撃は続く。

ひゅん・・・ぶぅん・・・がきん・・・。


「あ、あのね・・・・その・・・・」
「うん」
「・・・・それ・・・そろそろ死ぬんじゃ・・・・」


ぶぅん・・・ぐしゃ・・・ぶぅん・・・ぐしゃ・・・・。


「そうだね、死ぬかもね・・・・」


気がつけば僕の武器はトンファーからバットに変わってるし。
立派に死亡フラグはたってるよ。出血も致死量に達してるはずだし。


「急所は狙わずに痛くてなかなか気を失えず死ねないポイントを狙って攻撃してたんだけどね。ここまで出血多くちゃ・・・無理だね」


一部始終を見ていた沢田は山本(だったもの)を見ながら呑気に評価した。
周りにいる隼人のクラスメートたちはこれから始まる中学生活を夢見ていた入学式がうそのように黙り込んでいる。
けど誰も教師を呼ぼうとか、彼を助けようとするものはいない。

君子あやうきに近寄らず。新入生たちはひとつ大人になったようだ。
コレが社会に出るって事だね。そんなこと考えながら山本(だったもの)を片付けようとすると隼人がポツリとつぶやいた。


「キョウちゃん・・・・」


この呼び方は素になってるね。半分涙目だし。
僕は落ち着けるように隼人を撫でると隼人はポツリポツリと言葉を搾り出した。


「・・・・自分の教室が殺人現場だなんて・・・怖いよぉ・・・おばけとか・・・でない?」


そういって見上げてくる目は小さい子供そのものだった。

僕ははっきり言って非科学的なものなんか信じない。
隣にいる沢田もその系統だろうと気配でわかる。

だが、この子は・・・・。


気がつけば沢田は携帯を取り出し、ボンゴレ医療チームを学校に呼んでいた。


よかったね、山本(だったもの)。命拾いができて。
隼人に感謝してほしいものだね・・・と思ったけどやっぱり止めとこう。なんか誤解して図に乗りそうだし。


そんなこんなでどっと疲れた入学式。
まぁこんな感じで、隼人たちの学校生活は始まることになった。