「ごーくでらv恥ずかしいからって逃げることはないだろう!」


ははははと豪快に笑いながら僕の腕の中の隼人に突進してくる少年。
嫌味なほどに爽やかな風貌と、この隼人の真情を把握してない・・・というか自分に都合のよいようにしか受け取らない彼。
この態度と顔には嫌というほど見覚えがある。


「もしかして君、山本武?」


少し苛立たしげに尋ねると彼はやっと僕に気づいたという感じで僕の方へ視線を向けた。


「あれ・・・?もしかして雲雀・・・先輩?」


下級生という立場を思い出してか後付で先輩付けにする。こういうところが運動部っぽい心がけだよね。まぁ、そんな事はどうでもいいけど。


「もしかしなくてもそうなんだけど」
「あははは、ヤダなぁ。確認ですよ、確認」


のわりには僕の存在にすぐには気づかなかったみたいだけど。


「で、この彼は誰なんですか?」


此処まできてやっと傍観者だった沢田が僕達の会話に参加してきた。相変わらず腕の中の隼人は震えて怖がっているが、事情を知らない沢田はとりあえずこの事態に楽しそうだ。


「あぁ、彼はね・・・」
「俺は獄寺が日本にいた頃の幼馴染で仲の良かった親友だ」
「とかいつもほざいてる馬鹿だよ」

「あぁ、なるほどね」


納得できました。とやはり楽しそうな沢田。
まぁね、このやり取りで分かってもらいたいよ。僕としても。説明するとなるとなんか疲れそうだし。隼人はまだ怖がっているし。


そう彼と僕達の関係。それを言い表すとしたら親友とは真逆に位置する言葉だろうと思いながら、僕は過去の思い出に思いをはせた。