僕達が会場に入る頃には体育館には人・人・人でごったかえしていた。新入生に在校生代表、父兄達に教師陣にどこかのお偉いさん。いつもなら広く感じる体育館もこうしてみると狭く感じるから不思議だ。


「じゃあ新入生はあそこにクラス分けの表がはってあるから、それを見て待機しててね」
「雲雀は?」
「僕は会場整理。それに新入生はあとから入場だから在校生と集まる場所が違うし」


そういうと早とは僕の学ランの裾をつかんだ。なんとなく不安なのだろう。
久しぶりに会ったときは随分強気になった気もしたけど・・・人見知りは相変わらずみたいだね。


「怖いの?」
「こ怖くなんか・・・べ、べつに・・・・」


僕の言葉に過剰反応しながら隼人は顔を真っ赤にした。わたわたと意味不明な事を叫び言い訳をしながら掴んでいた手を離そうとする。
僕はそんな隼人に苦笑しながら、裾をつかんでいた手に右手を重ねた。


「大丈夫、あとで教室まで迎えにいってあげるから」


いい子で待ってて、というとしばらく動きを止めた後で頷いた。すごい小さくだったけど。
そして隼人は僕から手を離すと複雑そうな顔をして軽く突き飛ばす。


「こ、子ども扱いするな・・・・」


説得力のない台詞を有難う。
けど此処で笑うと彼女の機嫌を損ねてしまうことが分かっているので、黙って見送ることにした。そして隼人が離れた直後、彼女の後ろで様子を眺めていた沢田は張り付いたような笑みを浮かべながら僕に近づく。


「まぁ心配しなくても俺がいますから」
「けど、クラスが違ったらどうするの・・・」
「え?ありえないですよ」


そう断言しきると沢田も形だけの挨拶をして隼人の後に続いて会場の外へ。
なんであそこまで自信満々なんだか。でも実際、確認したら二人は同じクラスに分けられていた。彼がこのクラス分けを見る時間はなかったわけだし、裏工作する時間もなかったはずだが・・・・。

偶然とは恐ろしい。そういうことにしとこう。