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そんな約束から5年後。
突然、彼女から手紙が届いた。
『日本に帰る』
と、要件だけ書いた愛想のない手紙。それでも僕は数年ぶりに会える彼女にとても喜んだ。
あれから5年。
地元では逆らう奴がいないくらいに僕は強くなった。腕力も知恵も心も強くなったのだ。約束どおりに。けれど義務教育という法律の壁と、経済力だけが打破できず僕は高校に上がるまで彼女に会いに行くことを我慢していたのだ。
あの約束があり、今の僕がある。
そういっても過言ではない。
だが、僕が会いにいくより前に彼女が日本に帰ってくるというのだ。しかも中学へ行く間は僕の家で同居することになっているらしい。女の子一人じゃ物騒だからという両親に僕は大いに賛成した。
今度こそ彼女を守ってあげるのだ。
弱くて泣き虫で可愛い隼人。
一番近くで、一番側で。
もう一人で涙をこぼさせないように・・・。
けれど、そんな決意をする僕は数日後に時の流れの残酷さを知る。
空港に誰より先に彼女を迎えに行った僕。けどゲートを通って現れた彼女は、想像を超えていた。
なにせ僕の中では5年前で彼女が止まっていたのだ。
けど想像力はある。だから僕なりに成長した姿を思い描いていた。
泣き虫で大人しくって小さかった彼女。おどおどとしていて僕の後ろにいつも隠れていた彼女。いじめられっこに追いかけられては泣いていた彼女。
だから大人しくってふわふわとしたイメージだったのだ。大きくなった彼女のイメージはそれこそ一言で言えば『お姫様』というイメージで。
なのに今、僕の前にいる少女。
隼人と思われる少女は僕の想像を軽くマッハのスピードで突き抜けた上にさらにそこから身を乗り出し宙返りで拡散をおこして固めた感じだった。だらしなく服を着こなし、まるで男の子のようないでたち。眉間に皺を寄せながら、荷物を肩にかけて出てきた彼女の姿を見たときは流石の僕でも声をかけるのには戸惑った。
けど綺麗な銀の髪も、くりくりとした緑の瞳も昔のままだったから・・・。僕が思い切って声をかけたとき、彼女の浮かべた笑顔ももう昔のままだった。
それはもう、天使というには恥じない笑顔で。
「よう、雲雀。約束どおり強くなってきたぜ!」
その言葉を聞いたとき、僕は5年前の約束を一瞬後悔した。
王子様との約束を信じたお姫様はずっとずっと待ち続けました。
何年も何年も。けれどお姫様がいくら待っても王子様は現れません。
そしてとうとう年頃となり待ちくたびれたお姫様は、
自らの手でドラゴンを倒すと塔を飛び出したのです。
ドレスを鎧に代え、自らの足で王子様にあいに旅立ったお姫様。
お姫様は自分の力で愛を探す旅へと歩き出したのです。
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