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(ヤンデレ−綱編)
俺は君が大好きだけど、君は俺が大事だという。
俺は君を愛しく思うけど、君は俺が大切なのだという。
そこに大きな差があると思わないけれど、あの日まで俺は君と俺は思いが伝わってると思ってた。だって君の行動原理の発端はいつも俺だから。まるで忠犬だと例えられた君の姿に俺は何時しか心も自分の方向にあると信じてた。君が自ら傍にいたいと誰これはばからず言っていた対象は俺だったし、俺の傍にいられることを望んだのは何よりも君だ。
だから、俺が誤解してた事が悪いとは思わない。むしろ、そう思わせた君の罪。
「人の心はみえないから分かりにくい」
そう言って微笑んだ俺の手にはカッターが握られていた。
目の前で震えているのは『お言葉は嬉しいのですが・・・すみません。なによりも十代目が大切だから俺ごときが十代目の伴侶になる事なんて出来ません』とか何とかいって見事に俺を振ってくれた馬鹿犬。あぁ、本当に馬鹿だよね君。大切って何。ごときって何。君の中の俺って何。
「見えないというなら見えるようにすれば良いんだよ」
馬鹿な君でも分かるように。俺はそう付け足すと自分の左の人差し指をカッターの先で数ミリ傷をつけた。
その途端に起こった絶叫。声の主は俺の腕にしがみついて半狂乱になりながら謝罪の言葉を繰り返す。
「ごめんなさいごめんなさいすみません俺が悪いんです十代目は悪くない俺が全部悪いんですごめんなさいごめんなさい十代目は悪くないすみません俺が悪いんです俺が悪いんです十代目は悪くないごめんなさい十代目ごめん・・・」
必死で何度も繰り返す愚かな姿に俺は心のそこからの笑みを浮かべた。
「でも獄寺君、こうでもしないと分からないだろ?俺の心がどれほど傷ついたかなんて」
「いえ・・・そんな事はありません・・・だから十代目・・・・それ以上は・・・」
「言葉じゃなんとでも言えるよね。そんな薄っぺらい言葉じゃ・・・俺余計に傷つくよ?」
腕は獄寺君に止められてしまってるから俺は半円を描いていた下唇をかみ締めてうっすらと血をにじませる。その光景を見てさらに顔を青ざめさせる君。あぁ、なんて愚かで馬鹿なんだろう。
「いやぁあああああああもう止めてください!俺が悪かったです!全部俺が悪いんです!」
「そうだよ、君が悪い・・・俺を傷つけた君が悪いんだ」
「そうですそうです。ごめんなさい!ごめんなさい十代目は何も悪くないんです・・・悪くないんですぅううううううう!!!!!!」
涙を瞳にいっぱい貯めて悲鳴に近い声を上げ続ける。俺は君に見せつけるように切れた薄皮からにじみ出た血を君の頬に塗りつける。
「君は君の大切な俺を傷つけたんだ。信じられないよね。許されないよね」
「はい、ごめんなさい!ごめんなさい!すみません・・・許してください」
「本当に俺は君のせいでいっぱい傷ついてしまったよ。君が馬鹿で愚かで俺の期待はずれだから」
「はい、そうです!俺が悪いんです!!俺が十代目を傷つけてしまったんです」
ごめんなさい、すみません、許して、全部俺が悪いんです、十代目は悪くない。
何度この単語を繰り返しただろうか。獄寺君の悲鳴と絶叫とその中に入り混じる謝罪。
最期には俺に絡めてた腕を離し床に座り込むと頭を何回も打ちつけながら土下座を繰り返し始める。
「ごめんなさいごめんんさいごめんなさいごめんなさい・・・お願いだからそれ以上俺の大事な十代目を傷つけないでください・・・お願いします」
矛盾した願い。君はそれに気付いてるのかな?
君の大事な十代目を傷つけてるのは俺。君が土下座してまですがり付いてるのも俺。そして君が大事で助けようとしているのも俺なんだよ?
君は俺が大切だから俺を傷つく事に酷く怯えて、俺は君に大事にされすぎてるから傷つく。
この悪循環は何処から始まり何処へ行くのだろう。はっきりいって分からない。分からない。
分 か ら な い か ら −
俺が途中でその循環を止めて好きなように組みなおしてもいいよね?だって誰が作った循環システムか分からないんだから。
「分かったよ。君の大切な十代目は俺が助けてあげる」
さぁ、君を救う言葉を囁こう。
「君が俺の言う事さえ聞いてくれればこれ以上、君の大事な十代目は傷つかないよ」
ひとつひとつ物覚えの悪い生徒に教える教師のように、心に染み込ませる言葉。
「獄寺君。今すぐ俺の心の傷を癒して」
俺はゆっくりと左の薬指の付け根を円を描くように薄く切っていった。小さな君の悲鳴が上がる。
「これ以上、俺を傷つけないで」
指を伝って滴る血。それはゆっくりと床に落ちると君の零した涙と混ざり合う。
さぁ、この傷を塞ぐにはそれ相当の包帯を。俺の心の傷を塞ぐ包帯は君にしか用意できない。
君は俺の目を見て頷くと自らの左の薬指にはまっていた繊細なデザインの指輪を床に落とした。
カランカランと音を立てて落ちた指輪の裏に刻まれていたのは君と俺以外の男の名前。
「俺は一生、綱吉さんのものです」
そういって儚げに笑った君に俺は誓いの口付けを落とした。
最後のとりを飾っていただきましたvでも十代目にするとヤンデレも純愛に感じる。
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