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(ヤンデレ―プリーモ編)
「ごめん、ジョット・・・俺はお前を選べない」
泣きながら銀の髪が美しい彼女は俺と俺の双子の片割れにそう告げた。幼なじみだった俺達と彼女。傍にいられれば幸せという年月は過ぎ、永遠を共に生きられないと知った季節、俺達二人は彼女にプロポーズを同時
にした。
俺たちの可愛いお姫様。どちらが選ばれても選ばれなくても恨みはなし。彼女の決断に全てゆだねようと俺達兄弟は彼女の祝いの日の前の夜に話を決めたのだ。そして夜が空けた今朝、何時ものように行った彼女の家
で花束を差し出した俺達。今日が彼女の誕生日ということで驚きながらも喜んで受け取った彼女は俺達が次にいった言葉で目を見開いた。
「俺達どちらかを選んでくれ」
最初は意味が分からなかったのだろう。首をかしげた様子で不思議そうに俺達を見比べていたが、俺たちの真剣な目に気づくと彼女は俺の花束を受け取り冒頭の言葉を継げた。銀の髪がカーテンとなり彼女の涙は俺から
は見えない。けど俺達双子へ放たれた言葉は涙と共に零れた。
翌日、ジョットは俺の前から姿を消した。彼女を連れて。
片割れの裏切りに俺は怒りを覚えた。そして愛する女を連れ去った片割れの身勝手さに俺は絶望を胸に抱いた。
俺はアイツを許さない。それだけを胸に俺はそれからを行き続けることになった。どちらが選ばれても選ばれなくても恨みはなし。そう決めたのにアイツは俺を裏切り、彼女も裏切ったのだ。
一人残された最悪の日々。
それから数十年後、風の噂に奴はマフィアのボスになった事を聞き、同時にそこに彼女がいることも知った。優しかったジョットが何故マフィアになんてなったのか俺は知らない。でも愛する女に選ばれなかった悲しみはあいつの
心を変えてしまったのだろう。そして彼女を逃がさない力を手に入れるために通常なら考えられない行動に走ったのだろう。他の誰にも分からなくても俺にはわかる。だてに血肉を分けた双子ではないから。
しかしそれで、どうなる?彼女を無理やり縛り付けるアイツの心はそれで救われたのだろうか。俺にはそうは思えない。このままじゃアイツも彼女も幸せになれない。そう思った俺の行動は早かった。
仲間を集め、小さなファミリーから徐々に力を増やしていく。そしてアイツ同様何十年もかけて勢力を広げた俺は何時しか奴と変わらないくらいの力を手に入れる事が出来た。人間死ぬ気になれば何でもできるらしい。その
行動力が絶望からか愛からか復讐心からか・・・それは分からないが俺は彼女を救う力を手に入れたのだ。
そして二人が姿を消した季節から何十年もたった今、俺は彼女の前に立っていた。
彼女はジョットととの間に出来た我が子を抱き地下室で小さく震えていた。かわいそうに・・・怯える姿に心が痛む。俺は彼女の今までの境遇に同情しながら手を伸ばした。
「さぁ、助けに来たよ。」
待たせてゴメンね。
「一緒に帰ろう。」
なつかしの故郷へ。
「もう一度やり直そう」
しかし彼女は俺の手を取らなかった。部屋の隅でガクガクと身体を震わせ俺を睨みつけていた。
「なんで・・・なんで彼を殺したんだ!」
ヒステリックに叫ぶ彼女。けど俺は意味が分からなかった。何故彼女は怯えている。何故彼女は怒っている。
俺は血にまみれた自分の両手を眺めながらぼんやりと思う。あぁ、そうか。心優しい彼女は俺が双子の片割れを殺した事を怒っているのか。
「しょうがないじゃないか!ジョットが俺を裏切るから悪いんだ!君に選ばれたのは俺なのに・・・ジョットが君を連れ去ったりするから・・・」
ポタポタと涙を零しながら俺は叫んだ。そうだ俺は悪くない。悪いのはあいつだ。俺と君を裏切ったあいつ。
本当なら俺だってこんな結末を望んでいなかった。君と俺達が過ごしたまぶしい日々の中で望んだのは君と俺が結ばれて、俺たちの仲を祝福してくれるアイツと3人で幸せな日々を作っていくという御伽噺みたいな幸せな
結末。なのにそれを壊したのはアイツだ。
「そうだ俺は悪くない悪いのはジョットだ・・・・」
涙が止まらない。血のついた手で何度こすっても俺の目から涙が溢れ続けた。永遠に枯れることが無いんじゃないかという位にとめどなく流れる涙。
でもその涙を止めたのは君が一筋の涙と共に零したたった一言だった。
「ジョットはお前じゃないか」
その後、俺の作った組織は格式・伝統・規模すべてにおいて敵が無いほどの大規模なマフィアに成長を遂げた。
けれどその創生を知るものは今や誰もいない。
一応単行本で確認したんですが・・・プリーモの読み方はジョットでよいんですよね?少し自信ないですがそれで押し切らせていただきました。
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