(1)

ある日の平和な帰り道。


ハヤト「あ、じゅーだいめ!にゃんこですよ!!」


ハヤトちゃんは野良猫を発見しました。


ハヤト「アッヴェネンテ(かわいい)ですねー」

ツナ「そうだね」

ハヤト「モコモコですねー」

ツナ「そうだね」

ハヤト「ふわふわですねー」

ツナ「そうだね」


ハヤトちゃんはニコニコしながら猫に近づきます。
けれど体を撫でようと手を伸ばした瞬間・・・猫は毛を逆立てて威嚇し始めました。


ハヤト「(びくっ)」

ツナ「あれ、機嫌が悪いみたい。
   これは撫でるのあきらめたほうがいいかもね」

ハヤト「う〜・・・」

ツナ「ハヤトちゃん?」

ハヤト「にゃんこ・・・」

ツナ「へ?」

ハヤト「にゃんこ、にゃんこ、にゃんこ、にゃんこ、にゃんこ、にゃんこーーー!!!!!」


ハヤトちゃんはそう叫ぶと威嚇したままの猫に向かって突進しました。
でも猫も負けていません。低く唸りながら少しずつ幅を広げていきます。



野良猫vs?ハヤトちゃん。 つづきます。


(2)

ツナ「ハヤトちゃん!危ないって!!」

ハヤト「いーやーでーすーー!!
    ハヤトはにゃんこにさわるんですーーーー」


ツナに押さえつけられてもハヤトちゃんはじたばたと暴れます。
すでに目の色が変わってしまっているようです。


ツナ「落ち着いて!落ち着いてハヤトちゃん!!」


小さい体を押さえつけながらツナは何故だかデジャブに襲われました。
なんででしょう・・・前にもこんな場面があった気が・・・・。


ツナ「あ」


ハヤトちゃんを追っかけてるときの山本に似ている。
そう思った瞬間、力が抜けたのでしょう。
ツナの腕から抜け出すとハヤトちゃんは猫を追って走り出しました。


ハヤト「にゃーんーこーーー」


『ごーくーでーらーーーーー』


あぁ、本当にそっくりです。

気づきたくなかったけれど、人間って
好きなものを目の前にすると本能をさらけ出してしまうようです。


なんとなくそれに気づいて切なさを覚えてしまうツナなのでありました。




でもハヤトちゃんの場合はまだ子供の駄々っ子レベルなので可愛げがあります。


(3)


ハヤト「にゃんこにゃんこにゃんこにゃんこーーーー」


ハヤトちゃんは夢中になって逃げます。
猫も必死になって逃げます。

建物の隙間や、塀の上。
一人の一匹の追いかけっこは場所を選ばず続けられました。


ハヤト「にゃんこ、にゃんこvvv」


嬉しそうな表情で追っかけるハヤトちゃんの様子はとてもほほえましいものでした。
けれどそんな彼女を追っかけるツナは気が気ではありません。


ツナ「あ!そこ人の家の庭!あ、勝手に入っちゃだめだって!!」


猫の行く道を行くため追っかけるほうも大変です。
ハヤトちゃんは小さいからいいでしょう。
でもツナには通れない道が多々ありました。
そのたびに家の人に謝ったり遠回りしたりで
・・・気がつけばかなりの距離が開かれてしまっていました。


ツナ「ハヤトちゃん!!??」


姿を見失ったツナは慌てふためきました。


そのころ。
ハヤトちゃんはとうとう猫を袋小路まで追い詰めてました。


ハヤト「にゃんこー」


ハヤトちゃんはニコニコしながら手を伸ばします。
しかし追い詰められても猫は負けません。


ばしっ


ハヤト「ひゃう!」


伸ばされた手に猫パンチを咥えると、猫は低く唸りを上げました。



猫パンチor猫キック。


(4)


ハヤトちゃんは伸ばした手を見ました。

真っ赤にそまる掌。

傷はたいしたものではありませんでしたがジワリと血がにじんでいました。


ハヤト「う・・・ぅ」


痛む手を押さえます。
痛い。怖い。

パニックになっているハヤトちゃんの目じりにはほんのりと涙が浮かんでました。
そして・・・。


ハヤト「うぅ・・・うえええーーーん」


とうとう耐え切れなくなったハヤトちゃんは大声で泣き始めてしまいました。
その声を聞いて、ツナはハヤトちゃんのいるところを目指します。


ツナ「ハヤトちゃん!」

ツナ「えぅ・・・じゅーだいめぇぇ」


ツナの姿を見つけるとハヤトちゃんは抱きついて泣き始めました。
ツナも血のにじむ掌を見てすべてを察します。


ツナ「だから危ないって言っただろ・・・」

ハヤト「ひっく・・・ごめんなさい・・ごめんなさいぃ」


ハヤトちゃんは嗚咽混じりに謝り続けます。

危ないことしてごめんなさい。
勝手なことしてごめんなさい。
言うことを守らなくってごめんなさい。


ハヤト「でも・・・ハヤトは・・・にゃんこにさわりたいんです・・・・」


そう付け足すとハヤトちゃんはさらに大声で泣き始めました。


次で完結です。


(5)


ツナ「しょうがないなぁ・・・・」


ツナは泣き続けるハヤトちゃんをなだめると溜め息をつきました。
そして一人、野良猫に近づいていくとにっこり笑いかけます。


ツナ「自分の立場をわきまえようね・・・・獣風情が」


途端、猫の体がビクンと震えました。

ツナはあくまで笑いかけています。
けど、目はけして笑ってません。
まるで食物連鎖の頂点から見下ろすような目です。

この人に逆らってはいけない。
猫は逆立てていた毛を落ち着かせると「にゃー」と鳴いて体を摺り寄せました。


ツナ「ハヤトちゃーん。もう大丈夫だよ」

ハヤト「え、本当ですか!」


ツナの声に顔を上げるとハヤトちゃんは恐る恐る猫に近寄ります。
そしてびくびくしながらさっきとは逆の手で体にそっと触れました。


ハヤト「あ・・・」


猫は威嚇するどころか体を摺り寄せてきます。


ハヤト「じゅーだいめ!すごいです」


きゃっきゃっと喜ぶとハヤトちゃんは猫を撫で回します。
ツナもそんなハヤトちゃんを嬉しそうに眺めます。



こうしてハヤトちゃんはこの日、好きなだけ猫を撫で回したのでした。
偉大な十代目のおかげと、心の中で感謝しながら・・・。


そんなこんなで今日も、ハヤトちゃんの周りは平和みたいです。
めでたしめでたし?



ツナ、ブラッドオブボンゴレ覚醒編でした(おぃ)です。