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(1)
春休みです。 おやすみです。
ハヤトの通う並森中学校も、ながーいおやすみです。 そのながーいおやすみの間、ハヤトと十代目と山本と…えっとクラスのみんなは春休みのあいだの一番いんしょーに残った事をひとつ日記に書いて学校が始まったら発表することになりました。
ワクワクとドキドキです。 ハヤトは何を書こうかな? 一緒に宿題をやろうと十代目の所にいくと、十代目も同じく日記で悩んでました。
どうしましょうか、じゅーだいめ?
そう言うと十代目は渋い顔をしながら「あの日」のことを書こうかなと言いました。 あの日?あの日。
あっ、あの日!
ならハヤトもあの日を書くと言ったら、十代目はもっと変な顔をしました。
なんでだろ? あんなに、あんなに楽しい日。 十代目はそうじゃ無かったのかな・・・?
続きます。
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(2)
春休みのある日。
その日の朝、ハヤトは映画館の前で悩んでました。
ドラらんの映画です。
未来の世界から来た、動物型のロボットが主人公の映画です。
ハヤトはイタリアでこのアニメを良く見てました。
とっても面白くて、とーーーーってもすごいロボットなのです。
色々な問題を不思議な道具で助けてくれるのです。
でもドラらんを見たくてもハヤトはこの日、
お小遣いのほとんどをおうちに置いてきてしまいました。
映画はスゴーーーク見たいです。でもお金がないとは入れません。
ドラらんのポスターを眺めながら、ぼーっとしていると
たまたま通りかかった十代目がハヤトに気づいて声をかけてくれました。
そしてハヤトがドラらんのことをいっぱい、いっぱいお話しすると
十代目は笑って映画館の中につれてきてくれました。
そしてチケットを売ってるお姉さんに何か話すと
ハヤトがドラらんの映画を見れるようにしてくれました。
しかも十代目も隣の席で見ていくそうです。
すごい嬉しいです。
十代目はハヤトにジュースも買ってくれました。
十代目とハヤトが一緒に席に着くとドラらんの映画はすぐに始まりました。
ドラらんはもう一人の主人公である男の子と色々な冒険に出かけます。
冒険の途中では悪い人たちもいっぱい出てくるけど
男の子の友達やドラらんの不思議な道具のおかげで乗り越えていきました。
ハラハラとドキドキの連続で、ハヤトは泣いたり笑ったりで忙しいと十代目は言ってました。
映画の途中で急に画面がピカっと光って見えなくなるところがありました。
十代目が言うには大きなお兄さんがフラッシュをつかって写真を取ろうとしたからだそうです。
みんなが見ているのに迷惑です。
ハヤトがプンプン怒ってると十代目もそうだよねと真剣な顔で言いました。
映画が終わると十代目はハヤトをつれて走り出しました。
映画館を出てしばらく走ると、十代目は目立たないところにある喫茶店に入って
チョコレートパフェをハヤトのために注文してくれました。
とっても美味しかったです。
そして食べ終わると十代目はハヤトをお家まで送っていってくれました。
本当は部下であるハヤトが十代目を送っていかなくちゃいけないんですけど
真っ暗になっちゃうから良いよと十代目は言ってくれました。
十代目はやっぱり優しいです。
ハヤトは十代目の姿が見えなくなるまで手を振って見送りました。
本当にこの日はずっと十代目といれて楽しかったです。
次はツナ編。
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(3)
春休みのある日。
俺はこの日お小遣いをもらったばかりだったので、
買い物をしに町の中を一人でブラブラしてました。
特に予定もないので適当に歩いていると
映画館の前で立っているハヤトちゃんの姿を見つけました。
ハヤトちゃんは真剣な顔で映画館のポスターを見ています。
何を見ているのかと声をかけようとすると、
ハヤトちゃんの背後で急にカメラのフラッシュが光りました。
光の元をたどると、電信柱の影にカメラを構えた山本が立っていました。
怪しいです。怖かったです。
通りすがりの人たちも気にはしているけれど怖くて声をかけずらいみたいです。
俺はハヤトちゃんに声をかけると姿を隠すようにして立ちふさがりました。
ハヤトちゃんの話を聞くと、どうやら今やっている子供向けの映画が見たいようです。
俺は特に予定もなかったし、ハヤトちゃんの年齢ならタダで入れるようなので
ハヤトちゃんと一緒にその映画を見ていくことにしました。
ハヤトちゃんは俺が一緒に見ていくこと、
そして映画を見れることに最初は遠慮していましたが
やはり映画の魅力に負けたらしく嬉しそうに映画館に入っていきました。
映画館に入ると俺はお小遣いからジュースを買い席に着きました。
ここまで来れば山本の目も防げるでしょう。
それに映画が始まってしまえば真っ暗になるのでこちらのものです。
そう思いながら俺は映画が始まるのを待ちました。
映画が始まると、ハヤトちゃんは真剣にスクリーンを見ていました。
俺も昔見ていたアニメなので懐かしく思いながら映画見てました。
けど途中からは隣のハヤトちゃんの百面相の方が面白くって
そっちばかりに目がいくようになってしまいました。
悪役が出てきては涙をため、キャラクターが面白いことをすれば笑って・・・。
愛がよりよっぽど面白い。そう思っていると突然、ピカッと劇場内が光りました。
まさかと思って振り返るとそこには山本がいました。
カメラを構えている山本をあきれながら見ていると
映画館の人が山本を連れて劇場外に連れて行きました。
山本の魔の手はどこまでも伸びているようです。
俺は怖くなって映画が終わるとハヤトちゃんの手を引っ張って劇場を飛び出しました。
野球部の足にダメツナの俺がどこまで離せるか分かりませんが
映画館の人から注意を受けている今なら、スタート地点ではなせると思ったのです。
案の定、少し走って振り返ると山本の姿は後ろにありませんでした。
でも油断は禁物。俺は目立たない喫茶店に入ると疲れているハヤトちゃんを休ませます。
まったくホラー映画のようです。まぁ殺されはしないですけどそれより性質が悪い気がします。
念のためこの日は家までハヤトちゃんを送っていくと、
俺は溜め息をつきながら帰宅しました。
でも今も山本の目はどこにあるか分かりません。
ハヤトちゃんのためにも俺がしっかりしなくちゃ。
決意も新たな一日となりました。
次は山本編。
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(4)
春休みのある日。
この日も獄寺は可愛かった。
朝、可愛い服に着替えると可愛らしく散歩へと向かう。
最初は可愛く公園などを歩いていたけど
午後近くになると町に向かって歩き出した。
獄寺は可愛いので変な奴に狙われたら大変だ。
俺は姫を守る騎士の気分で影から見守ることにした。
でも獄寺は本当に可愛い。
動きの一つ一つが可愛い。
表情の一つ一つが可愛い。
これを俺の心のメモリアルだけに残しとくのはもったいない。
そう思った俺は道中に会ったコンビニに足早によるとカメラをひとつ購入した。
これで可愛い獄寺をとりまくりだ。
そう思っていたら獄寺はひとつの建物の前でピタっと止まった。
じっと壁に張ってあるポスターに見入ってるらしい。
可愛い可愛い。
俺はシャッターを何度も切った。
しばらくすると道の反対側からツナがやってきた。
ツナは獄寺と2.3言かわすと手をつないで建物に入っていく。
俺はあわてて後を追った。
建物は映画館だった。どうやら二人は獄寺の眺めていたポスターの映画を見るらしい。
映画館は真っ暗だ。こんな中で可愛い獄寺に不埒な奴が何かをしないとは限らない。
俺は二人の後ろのほうの席を取ると
見守るように獄寺にむかって熱い視線を送り続けた。
映画が始まると獄寺はこれまた可愛かった。
笑って泣いて怒って。
可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
俺は懐に隠してたカメラを構えた。
周りが真っ暗なのでフラッシュは必須だ。
けれどライトを使ったために俺は映画館の従業員に注意を受けることになってしまった。
俺が何度、獄寺の可愛らしさ、そしてフラッシュを使うことを必死になって説いたが
誰一人として重要性を理解しようとしない。大人ってのは変な生き物だ。
結局、夕方になって俺はやっと開放された。
映画館に獄寺の姿もツナの姿もない。
帰ったらしい残念だ。
この日はそのせいであまり獄寺の姿を見ることはできなかった。
学校がないとずっと一緒にいられないので残念だ。
でもそんな運命に俺は負けない。
今日のことを反省とし、しっかり見守り続けられる一人前の男になろうと俺は誓った。
次はまとめ編。
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(5)
学校で先生に日記を渡したら笑顔で受け取ってくれました。
でも返すときには変な顔になっていました。
「なにかあったら先生に言うんだよ?」
と先生は言ってくれました。ジャポーネのひとは皆親切です。
放課後、山本は一人先生に連れて行かれました。
だから帰りは十代目と二人っきりです。
「じゅーだいめ、山本はどうしたんでしょうか?」
「さぁ、どうしたんだろうね」
十代目はそういうとハヤトの頭を撫でてくれました。
よく分からないけど嬉しかったです。
春休みが終わってハヤトはひとつ大きくなりました。
学園が上がってお姉さんです。
でもまだ中学生には見てもらえないのが残念です。
早く大きくなって十代目のお役に立ちたいと思います。
後日、山本は風紀委員によって「しゅくせー」されたそうです。
この日本語はまだハヤトは知りません。
あとで調べておきたいと思います。
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